2022/04/08

日本眼科学会の事業内容

  令和3年4月に日本眼科学会の監事を拝命いたしました。まだまだ若いつもりでしたが、監事に指名される年齢になってしまいました。そこで改めて定款を読むと、監事は理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成する、つまり日本眼科学会の事業や財産(会計)をチェックすることが仕事でした。
 恥ずかしながら、私は評議員会に出席するまで、日本眼科学会が具体的にどのような事業をしているかあまり理解しておりませんでしたが、評議員会では事業計画あるいは事業報告が必ず声を出して読まれるため、自然と事業内容が分かるようになりました。そこで、この機会をお借りして事業内容を紹介させていただきます。
 ご存じのとおり日本眼科学会は公益財団法人で、会員は15,600人あまりです。その目的は、眼科学の進歩発展を図り、もって人類・社会の福祉に貢献することです。4年ごとに選挙によって評議員が選ばれ、評議員会が日本眼科学会総会と日本臨床眼科学会の前に開催されます。この評議員から2年ごとに理事と監事が決まり、理事会が毎年3月と評議員会の前に開かれます。さらに、理事から理事長と常務理事が選ばれて、常務理事会が毎月開かれています。常務理事は、庶務、会計、編集、渉外、保険、記録、専門医制度を分担します。ちなみに、評議員、理事、監事はすべて非常勤、無報酬です。理事会や評議員会に加え、さまざまな委員会(会誌編集、JJO編集、倫理、利益相反、社会保険、専門医制度、学術奨励賞選考、特別講演演者選考、評議員会指名講演選考、総集会プログラム編成、そして戦略企画会議など)が開催され、これらの決定事項に基づいて、日本眼科学会事務局の職員の方々が、業務を行い、あるいはサポートします。その事業内容をざっくり記載すると以下のとおりです。

 1.学術集会
 日本眼科学会総会と日本臨床眼科学会(日本眼科医会との共催)を開催します。両学会の会長や評議員会指名講演の演者は評議員の投票で決まり、総集会プログラム委員会が、プログラム委員会枠の、特別講演演者、シンポジウム、教育セミナー等の企画・オーガナイザー・演者を決め、さらに一般演題やインストラクションコースの査読をします。また、屈折矯正手術とオルソケラトロジーの講習会を主催および指定し、水晶体囊拡張リング、白内障手術併用眼内ドレーン、羊膜移植および光線力学(的)療法の講習会を指定します。
 2.学術論文集・学術図書
 日本眼科学会雑誌、JJO、眼科用語集を刊行します。
 3.学術の振興および奨励
 日本眼科学会賞を日本眼科学会総会の特別講演演者に、日本眼科学会評議員会賞を評議員会指名講演演者に、40歳未満の研究者から日本眼科学会学術奨励賞を授与します。また、日本眼科学会雑誌最優秀論文賞を毎年授与します。
 4.眼の疾患に関する調査・研究
 眼に関するガイドラインや厚生労働省政策研究事業を会誌とホームページに掲載します。また、網膜芽細胞腫および網膜色素変性の症例登録を行います。
 5.市民公開講演会
 眼疾患と眼科医療に関する啓発活動として、年2回開催します。
 6.内外の関連学術団体との連絡および協力
 国内では、日本眼科学会関連学会が27あります。海外では、ICO(国際眼科連合)やAPAO(アジア太平洋眼科学会)に加盟しています。
 7.専門医および各種認定
 専門医認定試験の実施と専門医の認定、専門医の資格更新認定、生涯教育事業および研修施設の認定を行います。
 8.専門医生涯教育
 専門医生涯教育教材を会誌に掲載し、アメリカ眼科学会の教材も利用しています。専門医制度講習会を年2回開催し、全国8ブロックにおける講習会を日本眼科医会と共催します。
 9.臓器移植や失明予防に関する運動の推進
 日本アイバンク協会および日本失明予防協会を援助しています。
 10.その他目的を達成するために必要な事業
 会員および社会への情報提供をWebサイトおよびメールマガジンを活用して行います。社会保険に関しては、診療報酬改定要望を含め検討します。さらに、5つの戦略企画会議の委員会があって、人材育成・専門医制度、国際化・研究、組織強化と保険医療対策、政策提言活動と啓発活動、次世代医療(AI、ビッグデータ、遠隔医療)に関して中長期的なビジョンを策定します。
 
 このように、現在の日本眼科学会は、諸先輩方の深い見識と多大な努力によって、将来を見据えつつ堅実に現状に対応する素晴らしいシステムが構築されています。コロナ禍、新専門医制度など対応が大変な課題が山積ですが、執行部は大鹿理事長の下、大変上手く機能していて、会計面を含め健全に学会が運営されていると思います。日本眼科学会のさらなる発展には我々会員の今まで以上の積極的な貢献が望まれます。

公益財団法人 日本眼科学会
監事 前田 直之