理事会から

2022/12/09

アイフレイル対策活動の進捗報告

 2021年4月から日本眼科学会記録理事に就任いたしました。2021年9月30日に開催された第19回日本眼科記者懇談会において、アイフレイル対策活動が一般にアナウンスされました。活動開始から1年の進捗状況を報告させていただきます。
 図1のアイフレイル普及啓発プロジェクト2021~2024に示しますように、プロジェクトは4期に分かれています。2021年9月までの内部発信期においては、まず、眼科医をはじめ、眼科医療関係にアイフレイルの概念、アイフレイル対策活動の意義の普及に努めてきました。一般アナウンス後は眼科医療関係者に対して概念の定着に努めるとともに、マスメディアや講演会を通して、一般市民へアイフレイルという概念の普及を進めるための活動を行っています。それとともに、他科・歯科・調剤薬局、行政との連携を進めていくことを目指しています。


 図1 アイフレイル普及啓発プロジェクト2021~2024のスケジュール.

 以下に、これまでの活動の概要を列挙いたします。

 1.Webサイトの作成
 アイフレイルWebサイト(https://www.eye-frail.jp/)を立ち上げ、アイフレイル概念の普及に努めてきました。Webサイトは動かし続ける必要がありますので、毎月アップデートし、最新の情報を発信しています。2022年8月には1か月間のページビュー数は2万件を超え、確実に増加しています。
 2.アイフレイルポスターの作成・配布
 アイフレイルポスターを「日本の眼科」2021年9月号に同封し、眼科医に配布しました。ポスターのデータファイルはWebサイトからダウンロードでき、自由に印刷し、活用していただけるようにしています。
 3.アイフレイルガイドブックの作成・配布
 アイフレイルガイドブック2021を「日本の眼科」に同封し、眼科医に配布しました。改訂版のアイフレイルガイドブック2022もWebサイトからダウンロードして自由に印刷できます。
 4.アイフレイルセルフチェックの作成・セルフチェックアプリの公開
 自身の視機能の衰えに気付くためのセルフチェック方法をWebサイトに公開しています。さらに、セルフチェックアプリをWebサイトに公開することで、視力、 視野などのチェックを自分で簡便に行うことができます(図2)。



 図2 アイフレイルセルフチェックアプリ.

 5.一般の市民を対象とした意識調査
 インターネットを用いて、アイフレイルに関する意識調査の回答を13,157人から得ました。自身の体のことで心配に思っていること、眼に関して困っていること、眼の疾患の認知度、受診などの実態まで幅広い基礎データを集めています。3年後に再度調査を施行し、活動の成果を評価する予定にしています。
 6.学会等での啓発活動
 学会でシンポジウム等を企画し、ディスカッションを通して活動への理解を深めるとともに、フレイル・オーラルフレイル研究・診療を第一線で行っている先生方との意思疎通に努めてきました。
 ・第74回日本臨床眼科学会
  シンポジウム12 「人生100年時代の眼科医療」
 ・第125回日本眼科学会総会
  教育セミナー6 「人生100年時代の健康寿命と眼科医療の役割」
 ・第75回日本臨床眼科学会
  シンポジウム6 「アイフレイル対策による健康寿命の延伸」
 ・第76回日本臨床眼科学会
  市民公開講座 「人生100年時代の目の健康」
  視能訓練士プログラム 「超高齢社会に向けた視能訓練士の役割を考える」
 ・第127回日本眼科学会総会
  シンポジウム 「フレイル関連研究の進歩」
 7.日本医学会連合主導の「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」への参加
 「フレイル・ロコモの克服に向けた社会への提言」で、人生100年時代における健康寿命延伸のための健康増進と医療対策の重要性が述べられ、その一つとして「QOLの維持・改善のための聴力と視力の保持」があげられています。
 8.アイフレイルサポートドクターの募集
 アイフレイルの診察・研究を行い、啓発活動をサポートしてくださる眼科医をアイフレイルドクターとして登録し、本Webサイトで公表してきました。現在、325名の眼科医が登録しています(2022年9月9日現在)。

 
図3 アイフレイルサポートドクターの募集.


 9.一般市民への広報活動
 日本眼科記者懇談会などの活動・学会での活動を通して、朝日新聞・読売新聞をなどの全国紙を含め、36紙の新聞に記事を、婦人画報をはじめ5雑誌に特集を組んでいただきました。
 10.学術誌への寄稿
 アイフレイルに関する19報が学術誌に寄稿されています。なかでも、Geriatric Medicine(老年医学)2022年6月号の特集「フレイルUpdate 2022」にアイフレイルに関する原稿を執筆させていただきました。また、人間ドック2022年5月号、「2021年度 高齢者のための健診・予防医療のあり方検討委員会 報告書~健康長寿にむけたこれからの健診のあり方について~」においても、眼科疾患(アイフレイル)に関して寄稿しています。
 11.地域の取り組み
 地域の眼科医会の活動、医師会などでの講演会、市民講演会などでアイフレイルの啓発活動を実施してくださっています(例:京都府・岩手県眼科医会目の愛護デー、奈良県生駒市市民公開健康講座、第76回日本臨床眼科学会市民公開講座)。講演会などで使用するためのスライドもWebサイトからダウンロードし、自由に使用することができます。
 12.調剤薬局との連携
 眼科医療関係者への定着とともに、調剤薬局・歯科との連携に力を入れてきました。調剤薬局には他科で処方されたお薬を受け取りに多くの患者さんがやって来ます。
  2022年度は8月20日から10月10日まで、関西のココカラファインが運営している調剤薬局41店舗で、アイフレイル対策キャンペーンを行いました。店内にポスターを掲示し、来店時にセルフチェックを行うことができるパンフレットを配布し、お薬を渡すときに可能な範囲でお話を聞いて、症状の有無を確認していただきました。このような活動は眼疾患の早期発見、自身の視機能を振り返るのに有効ですので、来年以降も継続的に行う予定にしています。
 13.「職場の健康診断実施強化月間」での眼科検診等の実施の推進依頼
 厚生労働省労働基準局安全衛生部からの「職場の健康診断実施強化月間」の実施に関する協力依頼は多くの団体、協会に通知されます。その中に、眼科検診等の実施の推進が盛り込まれ、アイフレイルチェックリストや5つのチェックツールを活用した眼のセルフチェックが推奨されました。転倒等の労働災害の原因にもなっている緑内障等の眼科疾患を予防し、早期に発見するための40歳以上の従業員に対する眼科検診の実施について、アイフレイルのリーフレットを活用することの周知が依頼されました。
 
 アイフレイル対策活動はまだ始まったばかりです。眼科医療関係者が共通の認識を持って、継続的に育ててまいりましょう。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 辻川 明孝