2023/02/10

コロナ禍の会計理事から

  2020年に新型コロナウイルス感染流行が始まって3年が経過しました。ワクチンの登場で沈静化するように思えましたが、未だにどのような形で感染禍が収束するのか、不確かな様相を呈しています。重症患者が減少しても、医療従事者の感染者や濃厚接触者の増加で、医療行為に制限がかかっています。コロナ禍以前と同じような生活に戻ることを期待するよりも、コロナ禍の経験を生かして、どのように社会生活を発展させていくのかが求められています。さらに、世界全体は紛争が絶えず、気候変動などの影響も危惧されている不安定な社会情勢です。このような環境のなかで、日本眼科学会の財政状況を会員の皆様に改めてご理解していただくことも大切です。会計報告は日本眼科学会Webサイトの事業報告のページに公開されておりますが、本稿で簡単に説明させていただきます。
 日本眼科学会の財政は、この数年、毎年約5億5千万円前後の財政規模で運用されています。会員の会費と専門医の登録料および総集会会費が主要な収入源です。したがって、毎月の常務理事会では、会計理事が会員数の増減や会費納入状況を報告しております。おかげさまで、日本眼科学会会員数は図に示すようにこの10年間でも増加傾向をたどっており、11月現在15,875名です。また、会費未納者数も100名程度で、皆様のご協力に感謝申し上げます。



 一方で、主な支出は、専門医制度関連費(専門医単位対応、通信教育教材、認定試験関連、講習会など)、総集会支出、雑誌刊行費(印刷・製本・送料・英文校閲など)、総務費(Webサイト管理、研究助成などの補助金、戦略企画会議関連費など)、人件費(業務委託費を含む)です。日本眼科学会雑誌のオンラインでの閲覧が可能となり、雑誌送付不要の会員数は現在3,721名で、印刷費、発送費が2019年よりも約1千万円減額になりました。しかし、この数年は雑誌送付不要の申し出はあまり増加していません。オンライン利用が増えて収支に余裕ができますと、他の活動費に回せますので、ご検討いただければと存じます。
 コロナ禍で予算額に対して決算額が大きく変化した科目があります。専門医認定試験会場や様々な委員会開催のための会場費や旅費がWeb形式を活用することで減額しました。しかし、理事会・評議員会のように、現地とWebのハイブリッド形式を採用することで費用が増額になったケースもありました。総集会費は、ハイブリッド形式で参加者は増加し収入増ですが、ライブやオンデマンド配信のために支出も増額しました。また、2022年は新専門医制度への移行のために、単位受付、オンライン研修会申請システム構築や業務委託費、そして専門医認定費などの支出が増額しました。戦略企画会議関連費にはウクライナ支援寄付金なども盛り込まれました。
 日本眼科学会は2013年に公益財団法人に移行して、公益財団法人としての会計3原則、つまり学術集会(公1)、学術書刊行(公2)、専門医認定や生涯教育事業(公3)の公益事業のための支出割合基準を守らなくてはなりません。この詳細に関しては、本誌第125巻(2021年)7月号の本欄をご参照ください。コロナ禍にあっても、幸いに2021年度はこの原則を守ることができました。しかし、会員数は増加していても会員の高齢化がさらに進むことを考えると、将来の眼科学や眼科医療の発展のためには、AIなどを活用した新たな医療構築のための研究支援や若い会員の教育・研究支援を促進する環境づくりの財政運用をさらに検討する必要があります。特にコロナ禍で制限された国際交流を活発にするための支援は大切です。また、専門医認定手数料の収入源、IT関連事業や日本専門医機構への対応、そして各種事業や学会活動を広げるための戦略の見直しなどの課題が推測されることから、効率よい会計運用が求められます。
 今後、コロナ禍で発展したオンライン環境などの利点を生かして、総集会や各種委員会の開催形式なども再検討し、時代に即した会計使途をこれまで以上に意識していきたいと存じます。また、昨今の個人情報保護法の改定もあり、2年に一度、冊子体として発行している会員名簿の形態について見直しを進めており、費用の大幅な軽減につながることも期待されます。
 会員の皆様には、限られた財政を公益のためによりよく活用するために、今後もご協力をいただきたくお願いいたします。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 平形 明人