理事会から

2023/06/09

日本眼科学会Young Ophthalmology Committeeがキックオフ
(+ChatGPTについて)

 これまでの2年間に引き続いて、庶務担当の常務理事を務めさせていただきます。庶務の「庶」という言葉の意味が「もろもろの」ということから分かるように、庶務担当の役割は、他の常務理事のようにある特定の役割に専念するというものではなく、多岐にわたります。換言すれば、理事長を陰で支える立場であると認識しています。これから2年間、全力を尽くす所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本稿では、最近、日本眼科学会に新たに設置した、Young Ophthalmology Committee(以下、YO委員会と略す)について記させていただきます。また、後半には最近話題になっていますChatGPTについて、専門家ではありませんが、現時点で私の感じるところを一言記させていただきます。

 日本眼科学会Young Ophthalmology Committee
 まず、YO委員会を設置した背景についてご説明します。YO委員会はアジア太平洋眼科学会(APAO)や米国眼科アカデミー(AAO)など、海外学会組織には存在している委員会ですが、その役割は、若手研究者の育成とキャリア形成のための施策を練ることです。特に、国際的な学会組織では、充実した教育環境が整っていない地域に対するサポートという側面が強いように思います。具体的には、教育コンテンツ作成や教育セミナー・フォーラムの企画、ファカルティデベロップメントなどです。一方、前号の大鹿哲郎理事長の「理事会から」に記載されていましたように、現在の日本の眼科の大きな問題は、国際的地位の低下です。この問題を未来志向で解決するためには、若手眼科医の自律的な発案と行動が必須であると私は考えています。ポイントは自律性です。そこで、今回、若手眼科医から多方面の課題に関する提案をしていただくことを目的として、YO委員会を立ち上げました。国際的人材の育成、国際交流の活性化、若手眼科医のキャリアパス、ダイバーシティの実現、リサーチマインドの醸成、若手同士のネットワークの形成などが課題として考えられます。委員構成としては、基本的に40歳未満の会員とし、理事から推薦された候補者の中から、年齢、ジェンダー、専門性、地域性、施設などのバランスを考慮して、10名にお願いしました。
 大鹿理事長のご厚意により、本年10月開催の第77回日本臨床眼科学会(大鹿理事長が大会長)において、YO委員会のキックオフシンポジウムを実施しようということとなり、現在、YO委員会で活発なディスカッションが行われています。ぜひ、キックオフシンポジウムに多くの方が参加されることを願っています。私自身は、この取り組みを通じて、全国の若手のネットワークが形成されることや指導的な人材が育つことを願ってやみません。

 ChatGPT
 さて、話は少し変わりますが、2022年11月30日にOpenAIから公開されたChatGPTは、2023年1月に史上最速で、一億人のアクティブユーザーを獲得し、世界的なセンセーションを起こしています。ChatGPTはGenerative AI(人工知能)と呼ばれる生成AIであり、すでに使用経験された読者の方も多いかと推察します。ちなみに、日本眼科学会に設置したYO委員会の行動計画を練るように、ChatGPT(GPT4)に指示したところ、以下の回答を得ました。①教育とトレーニング、②メンターシッププログラム、③研究助成、④国際交流、⑤コミュニケーションとネットワーキング、⑥リーダーシップとマネジメントスキルの育成、①~⑥のそれぞれに簡単に解説が述べられていました。個々の内容は一見、深みはないと感じましたが、さらにchatを繰り返すことにより、かなり参考となる情報を引き出すことができました。プロンプト(AIに投げかける指示)を工夫すれば、さらに有用な情報が得られる可能性があります。もちろん、現時点では誤りもありますので、人間の目で再確認が必要と思います。
 ChatGPTの基盤となっているのが大量のテキストデータを使ってトレーニングされた大規模自然言語モデル(large language model:LLM)であり、GPT3からGPT3.5、さらにGPT4と短期間に進化しています。その進化の速さはまさに驚異的です。また、最新モデルはマルチモーダルAIであり、テキストだけでなく、画像、数値、音声など複数のモダリティに対応可能で、chatだけでなく他への応用も急速に進んでいます。仕事の飛躍的な効率化に活用できることや、専門家でなくてもプログラミングできることなど、正の面がネットに溢れています。一方、海外のニュースを見てみると、負の面について活発な議論が行われています。例えば、汎用性AIは犯罪に利用される危険性がある、フェイクな情報が拡散される可能性がある、さらにAIの想像を絶する能力の高さから、人間には予測できないことが起こる可能性があることなど、高名な専門家が警鐘を鳴らしており、国際的な規範を作るべきであるとの見解を出しています。一方、日本国内から正の面と負の面の両方の議論があまり聞こえてこないことにやや危惧の念を抱いています。少なくとも、私たちが今認識しておくべきことは、 このような汎用性のAIは間違いなく、一時的なブームではなく、社会のあらゆる分野に多大な影響を及ぼし、私たち自身の生活様式や仕事環境を変容していくということです。しかも、そのスピードは急速であるということです。心構えと準備が必要であると感じています。

 以上、本稿では、YO委員会とChatGPTについて触れさせていただきました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

公益財団法人 日本眼科学会
常務理事 西田 幸二