平成21年12月4日
日本眼科学会会員 各位
財団法人日本眼科学会
マイラゲル(MIRAgel)の長期使用に伴う合併症についての注意喚起が、厚生労働省医薬食品局安全対策課から本学会に対し通達されましたので、お知らせいたします。
アクリル酸2ヒドロキシエチルとアクリル酸メチルの共重合体を原材料とする「マイラゲル強膜スポンジ」(以下、「マイラゲル」という。)は、網膜剥離手術用バックル材として、昭和60年に我が国で輸入承認され、平成9年初めごろまで全国の医療施設で使用されています〔輸入先:米国マイラ社(MIRA, Inc)〕。現在は販売中止となっていますが、術後10年以上を経過してから合併症を発生する事例も報告されており、会員各位をはじめ眼科医療従事者におかれましては下記の点に十分ご留意くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、この合併症はマイラゲル素材の変質に起因しており、現在、網膜剥離用バックル材として主に使用されているシリコーン材料では、同様の事象は報告されていないことを申し添えいたします。
記
- 過去にマイラゲルを留置した患者においては、本品の膨張に伴う異物感、結膜充血、眼瞼腫脹、斜視、複視、異物の突出などといった合併症が発生する可能性があります。
- 診断にはMRI(T2強調画像)が有効であり、自覚症状などが認められる場合には、早期に摘出することで複視の回復や膨張・変性に伴う強膜をはじめとする眼組織の障害を予防できる可能性が指摘されています。
- 摘出術を施行する際には、当該製品が経年的な変化により脆くなっていることがあり、鑷子による除去では、断片化し、摘出が困難となる可能性があるため、術野を大きく広げ、斜視鈎などで少しずつ押し出すように除去することが有用です。
- 摘出の際には、強膜と癒着している可能性があることから強膜傷害、穿孔や網膜剥離の再発には十分注意する必要があります。
- 摘出などに際しては、大学附属病院眼科や経験ある眼科専門医のいる施設への紹介を考慮することが望まれます。
- 昭和60年から平成9年までの間のカルテ等が保存され、マイラゲルの使用が確認された患者に対しては、可能な限り、情報提供をお願いします。
- 関係企業がマイラゲルの使用状況や合併症に関する調査の実施を依頼することがあるので、可能な限り調査への協力をお願いします。
以上
<参考文献>
- 樋田哲夫、忍足和浩:マイラゲルを用いた強膜バックリング術後長期の合併症について.日眼会誌107: 71-75, 2003.
- 目取真興道、長嶺紀良、我謝 猛、中村秀夫、早川和久、澤口昭一:マイラゲル(MIRAge®)の長期経過後の合併症.あたらしい眼科25: 255-258, 2008.