お知らせ

2024/01/10
会員の皆さまへ

ウェルナー症候群全国疫学調査事務局からのお知らせ

 ウェルナー症候群はまれな遺伝的早老症で、思春期以降に白髪、若年性の両側白内障、皮膚の萎縮や胼胝、内臓脂肪蓄積、糖尿病、心筋梗塞、悪性腫瘍などの加齢関連疾患を早発し、50代で死にいたる疾患です。世界における報告の三分の二が日本人であり本邦にはおよそ700~2,000人の患者がいるとされておりますが、未だ根治治療はなく、皮膚潰瘍や悪性腫瘍などによりQOLが著しく低下します。一方で、近年は患者の生命予後が改善しており、特に早期からの介入により、血管イベントによる死亡率が減少していることが分かってきました。すなわち、ウェルナー症候群においては早期診断・早期治療の重要性が以前にも増して高くなっております。
 ウェルナー症候群患者において最も早く出現し、感度・特異度の高い臨床症状の1つとして若年性(20~30代)の両側白内障があり、本症候群の患者は眼症状を主訴に病院を初診される場合が多いと考えられます(別紙「こんな患者はいませんか?」を参照)。特に若年で両眼の核白内障がみられたときは本疾患を強く疑います。また、日眼会誌第126巻1号にも掲載いたしましたが、ウェルナー症候群患者は同年齢と比べて乳頭周囲網膜神経線維層と網膜神経細胞複合体厚が有意に菲薄化しており、若年で緑内障を発症しやすい可能性が示唆されております。
 したがって、ウェルナー症候群の早期発見・早期診断に眼科医が関与する部分が非常に大きいと思われます。日々の診療において疑わしい患者をご覧になりましたら、診断に寄与できる近隣の大学病院等に速やかに紹介していただけるようお願い申し上げます。

 本研究班では、厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患研究事業)「早老症のエビデンス集積を通じて診療の質と患者QOLを向上する全国研究」の一環としてウェルナー症候群の実態を把握するための全国疫学調査を実施してきました。10年以上の一連の研究事業の中で、平成21~25年度の難治性疾患克服研究事業においてウェルナー症候群の診断基準改定と世界初のウェルナー症候群診療ガイドラインが作成され、翌平成26年度には重症度分類が作成され、平成26年5月にウェルナー症候群が指定難病に指定されました。平成29年度には診療ガイドライン、重症度分類が改訂され、令和2年度には診療ガイドラインが英文誌に公表されました。現在、ウェルナー症候群のレジストリ研究が進行中で、2023年3月の時点で4年間にわたるウェルナー症候群のレジストリーの登録状況は全国13施設、登録症例数54例となっております。このようなレジストリ研究から、前述の心血管予後の改善といった、ウェルナー症候群の臨床像を明らかにする知見が得られてきています。
 ウェルナー症候群に関するご質問は、werner.chiba@gmail.comでお受けいたします。
 ウェルナー症候群に関する情報や班研究の経過に関しては下記のホームページに掲載していく予定です。
 https://www.m.chiba-u.jp/dept/clin-cellbiol/werner/#item11

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患研究事業
早老症のエビデンス集積を通じて診療の質と患者QOLを向上する全国研究 研究班
研究代表者 横手幸太郎
千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 教授
千葉大学医学部附属病院 病院長

ウェルナー症候群全国疫学調査事務局:
〒260-8670 千葉市中央区亥鼻1-8-1
千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 講師
分担研究者 前澤善朗
TEL:043-222-7171(ext5257) FAX:043-222-7171(ext5257)
E-mail:werner.chiba@gmail.com