定義
ベーチェット病は、全身の諸臓器に急性の炎症性発作を繰り返す難治性の炎症性疾患です。
症状
眼にはぶどう膜炎が生じるため、霧視(かすみがかかったように見えること)、飛蚊症(虫が飛んでいるように見えること)、羞明感(まぶしく感じること)、その他、視力低下、眼痛、充血などの症状がみられます。全身に出る症状には、口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍があり、関節炎、副睾丸炎、血管病変、消化器病変、中枢神経病変が生じることもあります。
原因
原因は不明ですが、ヒトの免疫応答に重要な役割を担うヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)の中でHLA-B51という抗原の陽性率が健常者に比べ高いことが分かっています。また炎症が生じる際に発現する蛋白質であるIL10やIL23R/IL12RB2という分子の遺伝子領域の“一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)”が疾患感受性遺伝子であることも報告されており、遺伝素因も関係あるのではと言われています。
検査
一般的な眼科検査、蛍光眼底造影や光干渉断層撮影(OCT)などの検査に加えて、血液検査を行います。また内科で全身の検査も行います。
治療
炎症が軽度の場合は主に局所の点眼加療を行います。副腎皮質ステロイド薬の点眼液を用います。また、虹彩後癒着を防ぐために、散瞳薬であるトロピカミド配合剤(ミドリンP®点眼)も併用します。強い炎症の場合は副腎皮質ステロイド薬と散瞳薬を眼の周りに注射することもあります。さらに以下に示すような治療薬の全身投与を行います。
(1)コルヒチン(コルヒチン®)
もともとは痛風の治療薬で知られていますが、炎症で誘発される白血球の遊走を抑える作用を持ち、ベーチェット病にも有効といわれています。
(2)シクロスポリン(ネオーラル®)
シクロスポリンは免疫抑制薬の一つです。炎症で中心的な役割を担っているのはインターロキン-2(interleukin-2:IL-2)という蛋白質(サイトカイン)です。シクロスポリンはTリンパ球からのIL-2産生を抑制します。
(3)インフリキシマブとアダリムマブ(レミケード®とヒュミラ®)
ベーチェット病の基本病態は、好中球の機能過剰(暴走)と考えられており、これまでの研究により、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor alpha:TNF-α)が発症に大きく関与していることが分かっていました。このTNF-αを抑える薬が『抗TNF-α抗体(infliximab:インフリキシマブ)と(adalimumab: アダリムマブ)』です。