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フォークト―小柳―原田病

原因・病態

定義

フォークト―小柳―原田病(以下、原田病)は、急に両眼にぶどう膜炎と網膜剥離が生じて見えにくくなる疾患です。同時に髄膜炎や難聴が生じ、しばらく経過した後に皮膚の白斑、白髪、脱毛などが生じます。

症状

1. 前駆症状
 原田病では眼に症状が出てくる前に何らかの症状がみられることが多く、それを前駆症状といいます。風邪をひいたときのような頭痛、めまい、微熱、頭皮のピリピリ感、全身倦怠感などがみられます。

2.発症初期の症状
(1)眼の症状
 両眼の充血、かすみ、歪視(ゆがんで見えること)、視力低下を自覚し、眼科で検査をしてみると両眼の網膜剥離がみられます。程度や発症時期に左右差がみられることもあり、片眼だけの自覚症状の方や、ほとんど網膜剥離がなく視力低下もわずかばかりという方もいます。
(2)耳の症状
 内耳での炎症により感音性難聴、耳鳴り、めまいなどがみられます。
(3)髄膜炎の症状
 髄膜炎に伴う頭痛、発熱、頭皮のピリピリ感、全身倦怠感などがみられ、多くは眼症状に先行し前駆症状として現れます。

3.発症後期の症状
 発症早期の症状から回復したあとで、炎症が再発を繰り返したり、わずかな炎症が持続することがあり、そのために生じてくる症状があります。
(1)眼の症状
 後期にはぶどう膜炎の再発あるいは遷延化がみられることがあり、徐々に視力が低下することがあります。
(2)皮膚の症状
 発症初期には皮膚症状はほとんどみられませんが、炎症の遷延化とともに発症後半年から数年後に白斑、脱毛、白毛がみられるようになります。頭髪だけでなく、まつ毛やまゆ毛も白くなったり抜けたりします。

原因

メラニン色素細胞に対する自己免疫疾患といわれています。ふつう免疫というと、自分のからだに害を及ぼす異物(細菌やウイルスなど)に対して攻撃し排除するためにからだに備わっている防御機構です。しかし、自己免疫疾患とは自分のからだの中にある正常な物質を間違って悪い物質だと認識して免疫反応を起こし、その場所で過剰な炎症が生じる病気をいいます。原田病ではメラニン色素細胞を標的として病気が起きますから、メラニン色素の多い組織、つまり目、耳、髄膜、皮膚、毛髪などで炎症が生じるのです。

検査

一般的な眼科検査、蛍光眼底造影や光干渉断層撮影(OCT)などの検査を行います。原田病では聴覚検査や髄液検査も行います。


OCT検査では、丈の高い漿液性網膜剥離が確認できる。


蛍光眼底造影検査。後極部に多数の漏出点、蛍光貯留が確認できる。

治療

初期の治療は免疫抑制作用・抗炎症作用に優れた副腎皮質ステロイド(以下、ステロイド)を大量に全身投与する方法(ステロイドパルス療法)を行います。いずれも点滴から開始して途中から内服に切り替えます。