病名から調べる

視神経症

原因・病態

定義

視神経は、眼球(網膜)で集められた外界から光の情報を脳に伝える神経線維(電線に例えられる)の集まりです(図1)。この電線のもとになる神経細胞は網膜にあって、そこからの情報を伝達してはじめて、脳で意味のある「ものを見る」ことができます。この電線になんらかの障害を起こす病気を視神経症と呼びます。

図1.視神経

 


症状

片眼、時には両眼の急激な視力の低下や視野の真ん中が見えないといった中心暗点(図2)や上または下半分が見えなくなる(図3)のが主な症状で、眼球運動痛(眼球を動かすときの目の痛み)、目の圧迫感などを伴うこともあります。

図2、図3

 


検査

視力検査・眼底検査・視野検査のほか、磁気共鳴画像(MRI)検査・血液検査・髄液検査などが必要に応じて行われます。

原因(病名)と治療法

視神経症には様々な病気があります。

(1)特発性視神経炎
特発性とは原因不明の意味です。比較的急激に、片眼または両眼の視力低下が生じます。視力低下が生じる数日前ごろから、あるいはほぼ同時に眼球運動をさせると痛みを感じたり、眼球の後ろに種々の程度の痛みを感じる場合が約半数あります。視神経乳頭(視神経の眼球側の端)が赤く腫れる場合(視神経乳頭炎ともいう)と、視神経乳頭には当初所見がなく正常にみえる場合(球後視神経炎ともいう)があります。前者は比較的改善率が良いものです。しかし後者は多発性硬化症という、視神経以外の脊髄や大脳の白質(神経線維の集まり)にも病変が及び、しばしば軽快と悪化を繰り返すタイプの病気の一部になることもあります。自然回復傾向のものもあり、治療は程度、病態分類などで異なりますが、通常、副腎皮質ステロイドやビタミン薬の点滴が用いられます。

(2)抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎
アクアポリンとは細胞の表面にある水チャネルのことで、このサブタイプの一つであるアクアポリン4に対する抗体が作られ、脳や脊髄、視神経の毛細血管に障害を起こすことが分かってきました。視神経炎の約10%にこの抗体が証明され、両眼を侵し、重篤な視力低下を生じます。治療はメチルプレドニンの大量療法が用いられますが、反応が乏しい場合は血漿交換療法、免疫抑制薬や大量ガンマグロブリン治療が応用されます。

(3)虚血性視神経症
特発性視神経炎と並んで視神経症の二大疾患といわれる、視神経の栄養を与える血管に循環障害が起こる病気です。身体のほかの部位の循環障害(例えば脳梗塞や心筋梗塞)と同じように、多くは高齢者の片眼に、ある日ある時間に突然視力低下や視野欠損が起こるのが特徴です。ただし、一気に視力が下がる場合と、発症時より数日後のほうが悪化する場合とがあります。視野は中心暗点や、水平半盲(下半分あるいは上半分の視野欠損)がよくみられます。ほとんどの場合は、高血圧、糖尿病、高脂血症、心疾患、血液疾患などの全身の危険因子が存在します。まれですが、側頭動脈炎などの一種の膠原病が原因となったり、大きな開腹手術などで、長時間全身の循環が悪くなった場合に出現することもあります。一方、循環不全が急に起こらず、徐々に進んだ場合には、視力・視野障害が少しずつ進行するので、緑内障との見分けが大切になります。

(4)圧迫性視神経症
視神経が腫瘍などに圧迫されると、視神経が徐々に障害されて視力や視野の障害が起こります。多くは脳外科的治療が必要です。

(5)外傷性視神経症
落下事故、交通事故などで前額部(特に眉毛の外側に近い部位)を強打した場合に、片側の視神経管内の視神経が挫滅して、視力・視野障害が起こることがあります。受傷早期(通常24時間以内)であれば、副腎ステロイドの大量投与が試みられます。視神経管開放手術については議論があります。

(6)中毒性視神経症
薬物のうち、比較的長期投与において視神経を障害しうるものがあります。抗結核薬(エタンブトールなど)が有名ですが、抗菌薬や抗癌薬の一部などでも報告されています。新薬でまだ報告のないものもありうるので、薬物投与中に視力・視野障害が出現したら、医師に申告する必要があります。医薬品以外では、各種シンナー(トルエン、メチルアルコールなど)、農薬などで視神経障害が出現することがあります。疑いのある薬物の減量・中止が治療の基本です。

(7)遺伝性視神経症
レーベル病と優性遺伝性視神経萎縮が、遺伝性視神経症で比較的よくみられるものです。レーベル病は10代から40代までに発症する場合が多く、両眼の視力低下で発症します。男性に多く、母系遺伝です。血液を採取して、ミトコンドリアDNAの変異の有無をみて診断されます。両眼とも0.1以下になる例が大半ですが、周辺の視野は正常で、まれにかなりの改善がみられることがあります。優性遺伝性視神経萎縮は小学生ごろから多少両眼の視力の低下がみられるものの、通常は著しい低下になりません。どちらの疾患も、まだ治療法は確立していません。

(8)その他
その他の原因として、副鼻腔手術後、時を経て嚢腫ができて視神経を侵す「鼻性視神経症」と呼ばれるものや、最近は少ないですがビタミンB群などの欠乏による「栄養欠乏性視神経症」もあります。ただ、今なお、視神経症の10~20%は原因の分からないものがあるとされています。