網膜(『眼球の構造と機能』参照)の一部が引っ張られて裂けたり、薄くなって孔が開いたりした状態を網膜裂孔と呼びます。網膜剥離に進行していくので、直ちに治療する必要があります。
自覚症状
網膜には痛覚がないので、痛みはなく、裂孔が開くだけでは自覚症状はほとんどありません。そのため網膜剥離に進行して初めて気付く人も多いです。前駆症状~随伴症状として、光視症を自覚することもあります。裂孔が開いた場所に細い血管が走っていて、それが切れることがよくあり、そうすると軽度の出血が生じるので、飛蚊症を自覚します。
原因
加齢に伴うものが一番多いです。中高年になると後部硝子体剥離が起こってきます。それ自体は加齢変化であり、悪いものではありませんが、もともと網膜が変性して薄くなっている場所があると、硝子体の癒着もあることが多いので、硝子体が網膜から分離しようとすると引っ張る力が掛かります。ちょうど包装紙のセロテープを剝がしていると下の紙がベリッと破れるのと同じように、網膜が破れます。中等度以上の近視では、変性が起こっている人が多く、目のいい人に比べて網膜裂孔・剥離の頻度が高いです。
それ以外では、外傷で起こることがあります。目を直接ぶつけたり、頭に強い衝撃が加わった時に、硝子体が揺さぶられて、網膜に力が伝わって、裂けます。スポーツでボールが眼に当たった場合などでも網膜が破れることがあります。
それ以外では、生まれつき網膜に薄い部分がある人で、小さな孔(網膜円孔)が開くこともあります。
検査
検査用の目薬で瞳を開いて(散瞳して)、眼底検査を行なうことで、網膜裂孔の有無が確認できます。
治療
レーザーによる網膜光凝固術で、網膜剝離への進行を抑えるようにしますが、進行の方が早い場合もままあります。レーザー照射後、凝固が固まるのに1週間から10日かかりますが、その間に剥がす力が掛かったり、新たな裂孔が生じたりすると、網膜剥離に進行してしまいます。従って、その間はできるだけ視線を動かさない(車の運転やスポーツは控える)、頭や体に振動を与えないように気を付ける必要があります。目を使うことは問題ありません。読書やテレビ、パソコン作業などは視線が固定するので、むしろ良いと言えます。