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網膜中心静脈閉塞症

原因・病態

網膜中心静脈(網膜組織からの血液が心臓に帰るために集まってきて視神経乳頭の中心で集合した血管)(『眼球の構造と機能』参照)に血栓が生じて、血流が低下するために、網膜全体に広く出血(眼底出血)が生じ、視力低下が生じる病気です。
網膜中心静脈閉塞症は非虚血型と虚血型の2つのタイプに分類され、症状や予後が大きく違います。一般的に虚血型は視力も0.1以下で、治療をしても大きく視力回復することはなく、時に血管新生緑内障から失明してしまうこともあります。それに比べ非虚血型は予後が良好ですが、発症後3年ぐらいの間に、非虚血型から虚血型に移行する場合が約30%程度あるとされています。


網膜中心静脈閉塞症の眼底写真。眼底全体に網膜出血が見られる。

自覚症状

急速な視野異常変視症、視力低下が生じます。視野異常は片目の全体が、ぼんやりとかすんで薄暗く見えるが、真っ暗ではない、と言った症状が典型的です。一部暗い部分とある程度明るい部分が混在するのも特徴です。視力低下も病状の程度により、手動弁(手の動きが判別できる程度)といった高度の視力低下を来たす場合から1.0 近くと正常に近いものまで様々です。

原因

多くの場合、脳卒中と同じで、高血圧・動脈硬化が原因です。糖尿病などもリスクを高める一因です。したがって、中高年に生じることが多く、大規模臨床試験の平均年齢は65歳前後です。数は少ないですが、20代30代の人に発症することがあります。若年者の場合は高血圧の合併がなく、血管の炎症が原因であることが多いです。眼科治療と同時に、高血圧、高脂血症、動脈硬化といった基礎疾患の治療を行うことも重要です。

検査

病変の範囲、血管閉塞の程度を知るために眼底検査をします。視力に影響する黄斑のむくみの程度を評価するために、光干渉断層計(OCT)検査を行います。蛍光眼底造影検査を行い、網膜の循環状態を調べることで、病気のタイプ、状態など治療方針の決定に重要な情報を得ることができます。


網膜中心静脈閉塞症の蛍光眼底造影検査

治療

黄斑のむくみのために視力低下をきたしている場合は抗VEGF治療が行なわれることがほとんどです。視力がいい場合は、様子を観ることがあります。また、副腎皮質ホルモン(ステロイド)を眼球の外側に注射することもあります。視神経乳頭での血管や神経の炎症が原因と考えられる場合には、全身への抗炎症療法(ステロイド剤の点滴あるいは内服)を行うことがあります。
虚血型の場合には、硝子体出血や血管新生緑内障を予防するために、レーザー治療(汎網膜光凝固)を行います。また、硝子体出血を生じた場合には硝子体手術を行い、出血の除去とレーザー治療(汎網膜光凝固)を行うことがあります。